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茅花流し(つばなながし)
作:企てる造 作品42 茅花流し(つばなながし) 投稿日:2003/06/25(Wed) 23:04 Back Top Next

茅花流し(つばなながし)


薄墨色の空がにわかに鈍い鉄色を帯びた雲が地面から湧き出てくるようで、いつのまにか空を覆い被さっていた。

私はやっとの事で山の急斜面を降り立ち、麓の杉林の小道を歩いている。正確には急斜面の岩場で足を踏み外し、滑落したのだが。

そのわりには、身体を打ちつけた痕も、痛みもない。

ただ、疲れきっていた。

喉が渇き、ひりひりとする。

水も飲み干し、体力もかなり消耗していた。

空を仰ぎ見ると、暗い空が落ちて押しつぶされるような気がして、訳のわからない恐怖感に襲われる。

杉間の道も暗く、底なし沼にでも沈んでいくような気もする。

救いといえば、山百合の白い花が暗い山道の中でも、白く輝きを放っている事だ。

まるで、山百合の提灯の灯りを頼りに歩いているようだ。




ぽつぽつと、額に雨があたり、徐々に杉間の道は白く煙って行く。

前が霞みで見えなくなったが、杉木立の合間から、屋根らしき物が見え、私は小走りにその方向に駈け寄った。




駈け寄り近づいていくと、それは、桧皮に苔むした屋根におおわれ、しっとりと落ち着いた風情のある寺であった。

境内に入ると、杉の木立の合間に山紫陽花の花群れが咲き乱れ、霞みがたなびいて、静寂な淀みのない趣だった。

本堂から洩れている灯りに、少し安堵しながら近寄っていった。

蝋燭の灯りだけにしては、本尊の像が金色に異常に輝いている。

本尊の前には住職らしき坊さんが白絹の着物を着て座り、お唱えをしていた。

坊さんは、私の気配で振り向き見つめた。



まだ、住職にしては若い坊さんだが、透通るような白い顔の色艶に白絹の着物、青々とした剃髪はどこか優雅で眩しいほどの綺麗な坊さんだった。

こんな、山奥に寺などと、それにこんな、若い坊さんがいるなんて、と不信感を持ちつつ、尋ねた。

この先の湯宿に泊るのですが、まだ遠いのかと。

坊さんは、その湯宿は去年の秋に閉鎖してないと言う。

雨足も強い事だからお困りでしょうと、山寺で何もないのですが、投宿なされてはいかがですかと言ってくれた。

私は、恐縮しながらも願ってもないことだと、言葉に甘えて靴を脱ぎ、渡り廊下を坊さんの後へと歩いた。





案内された場所は風呂場だった。

身体を清めてから浴びてくださいと言われたが、坊さんが中々立ち去らないので、仕方なく、服を脱ぎ出したが、裸になる私を見ている。

裸になり、風呂場の引き戸を開けると、湯煙と同時に檜の香りが漂って来た。

戸の向こうから、着替えの着物と帯を置いて置くと言う、坊さんの声が、かすかに聞こえた。

私は、律儀な坊さんの歓待に応えて礼を言う。

しかし、不思議な気持ちだった。

この寺に入ってから、落ち着いた心持になっていた。

何故か解からないが、この寺に来るべくして来たという気もして来るのだった。


湯船に浸かり、冷えた身体を温めていると、坊さんの艶やかな手の肌や首筋を思い出していた。

私は坊さんに女を感じていた。

湯船の中で、陰茎が硬く、そそり立つ。

自分が何を考えているのかと、頭を振るが坊さんの艶めかしい姿態と、しなやかであろう肢体が私を獣にさせていく。

山を登り、何日も人と出会う事もなく歩き通し降りてきたら、女の代わりにでもなるような艶めかしい坊さんがいた。






私はそれまでの数日間、自慰をすることもなく歩いていた。

住んでいた東京で、愛人だった女の旦那を殺し、女と逃避して来たが、私が夜行列車の中で睡眠をしている間に、女は逃げたのだ。

勝手だが、今、思えばつまらない女だったような気もする。

逃げたと解かったときは、どうにでもなれと思ったが、女がいないと解かれば、急に男の身体をもてあます。

私は、どうにかしてあの坊さんを犯したくなってきた。

陰茎は、萎えることなく湯船の中で揺らいでいた。

風呂からあがると、坊さんと同じ白絹の着物が置かれていた。

私は身体を拭き、素肌のままで袖を通した。

帯を締めると同時に坊さんが脱衣所の戸を開けた。

私にどうぞと、蝋燭の灯りをかざしながら廊下を歩いた。

食事を用意したのでと、お膳の前に座らされ言うがままに箸を手にした。

何日ぶりかの食事だった。

急いで口に運ぶ私を見る坊さんは、どこか、これまでに私が抱いた女達に似ている。そう思えてくるのが不思議だった。

坊さんはものも言わず、静かには箸を口に運ぶ。




私は、静かに箸を降ろし、坊さんの顔を上目使いに見た。

そんな、私に気が付き、どうしたのかと見つめて、言う。





坊さんを睨んだまま、私は、膳を手で払い投げて、坊さんに近寄り、彼の細い腕を鷲掴み、懐に引き寄せ、口を奪った。

私の舌が坊さんの舌ともつれるように吸いあげ、耳をかじり舌を這わせた。

坊さんは、驚いて逃れようとするが私のいかつい体と力にはとうていかなわない。

坊さんの着物の裾を割り、ばっと袷を開いた。

そこには女ともつかない、白い柔肌。私を獣にして行く、条件は是だけでも、充分だった。

是なら、男の坊さんでも抱ける。

どうせ、こんな山寺じゃ、坊さんも、悶々と暮していることだろう。




おびえるような眼つきで、裾を乱したまま、後ずさりする坊さんの生ちょろい足首を片手で掴み引き寄せた。

胸元の襟を引き抜き、乳首に舌先でころがし、吸いとる。

坊さんの足と足の間に膝を割り込ませ、両手を片手で押し倒し、頭上に上げた。これで、身動きも出来まいと、あいている片手で帯を解き、ついに真っ裸にした。

ヒクヒクとすすり泣く坊さんの姿は、過去の女を思い出させ、余計に興奮してくる。

私は、坊さんの胸元にどかっと跨り、着物を剥いで、そそり立つ陰茎を口にねじ込んだ。

坊さんはむせながら、苦悶の表情を浮かべる。

坊さんの小さな赤い唇が私の黒い陰茎を咥え込んでいる。

その頭を片手で引き寄せ、陰茎を喉の奥深く飲み込ませ、腰を軽く打ち付けた。

腰を打ちつけながら、後を見ると坊さんの白い棹も小ぶりだが、硬くさせていた。

私は、坊さんの口に入れたまま、反転し坊さんの棹を扱いた。

相変わらず、私は坊さんの口に腰を引き抜いては、差し込んでいた。

急に坊さんの棹が硬さを増したかと思うと、棹に似合わず、大量の精液を吹上げ、黒光りした板の間の上に白い飛沫が点在した。

私も、坊さんの口に大量の精液を放ちながらも、口から引き抜かずに暫く腰を打ち付けていた。




坊さんは目が空ろになり、天井を見上げていた。

力も出ないのか、私が足首を持ち上げ、股の間に入り込んでも、ひるむ様子もない。

坊さんの尻の穴を覗き、舌先で穴をこじ開けるように差し込む。

坊さんは、甘ったるい声を少しずつ出しはじめ、私の愛撫を受け入れて来るようになった。

私は女の性器を愛撫するのと同じように、散々と舐め、吸いつくす。

舌の弄びで尻の穴はいつしか、ひくひくとうねるように開いてくる。

先ほど、射精したばかりだというのに私の陰茎がまた、鎌首を持ち上げてきた。

坊さんは腰をくねくねと、女のようにひねり喘いでいる。

私は仰向けになり、坊さんを一抱えし私の顔に跨がせた。

下から舌先を遊ばせる。

その度に、坊さんは腰を自ら、私の口に押し付け、よがる。

まるで、女を見るようだった。

坊さんの肌を擦りながら、尻の穴を舐めるとやはり、逃げた女を思い出す。

坊さんを後ろ向きに跨がせ、私の陰茎を咥えさせる。

坊さんの尻の穴に指をねじ込ませ、挿入させると腰が一瞬、引けたが、抵抗する事もなく、私の指の戯れに酔いしれながらも陰茎を咥え、しゃぶる坊さんだった。

段々と、私の精巣に精液が溜まりつつあるようだ。

私は、坊さんを抱き上げ首に手を廻させ、両腕で抱えた。

坊さんの腰を少し落とすと、陰茎が坊さんの尻の穴にメリメリッと入り込んで行く。

黒々とした私の陰茎が、根元まで坊さんの中にめり込んで行くと、逃げる前に抱いた女のそれより気持ちよく、しっくりとまとわりつくような感覚に酔いしれる。

抱えながら、揺さぶり、腰を打ち付けると、坊さんはすでに女の域を通り過ぎていた。

坊さんは、首に廻していた手を方と背中に廻し、毛深く厚い私の胸に顔を寄せ、もたれかかってきた。

私は急に坊さんがいとおしく思われ、唇に舌を差し込んだ。

坊さんは、舌を絡ませ唾液を口中で交換しあった。

激しく、腰を打ち付け、揺さぶり私の胸元で抱く坊さんは、完全に女だった。

悶々とした生活の中で、自分より逞しい男に抱かれ、快楽を得た坊さんは腰の打ち付けだけで私の胸と腹に、二度目の射精をした。

私は坊さんの精液を手で拭い、挿入した陰茎に塗りたくり、更に激しく腰をくねらせ、打ち付ける。

静寂な深閑とした山寺に、卑猥な音だけが響き渡る。




私も、二度目の射精を迎えようとしている。

この、坊さんとここにずっと、居たいと思えるくらい、いとおしい。

また、この上のない快楽を放り出したくもない気持ちもある。

そんな、私の気持ちを見透かしたかのように、尻の穴を締め付けてくる。

そして、私は坊さんの尻の穴の奥深く、熱い精液を吐き出した。

出し切っていないまま、繋がれた状態で、仰向けに倒れこんだ。

馬乗りになった坊さんがまた、私の心を見透かすように言った。




ずっと、一緒ですよ。いつまでも。あなたの側に、いつも。

そんな事は一時期だけで、ありえないと思うのだが、坊さんの言葉が妙に説得が在るように聞こえてならないのは気の所為だろうか。




気がつくと、私はいつどうやって寝たのか覚えもなく、坊さんの隣に敷かれた蒲団の上で朝を迎えた。

相変わらず、まだ雨が降り続いているようだ。

激しい雨の中、南風も出てきた。少し、蒸した朝だった。

こんな、雨を確か、なんてと言うのかを思い出してはいたが、逃げた女を案じる気持ちは更々なかった。

そんな、女に人情のひとかけらでも持ち合わせていれば、逃げなかったのだろうかとも思う。どこかで、非情な男だと、思っていたのだろう、だから逃げたのだと。



隣の坊さんの身体を弄っていると、また抱きたくなってきた。

坊さんは私に向け、微笑んで見つめた。

坊さんを引き寄せ、身体を愛撫し始めた。

と、本堂の方から、人の声が聞こえた。

坊さんを呼ぶ声だ。

坊さんは、私に待っててと、私を静止し白絹の着物をはおり、帯を締めながら部屋を出て行った。

ガヤガヤと、本堂の方から人の声が段々と聞こえてくる。

気になり、起き出して柱の影から見ると、血だらけで、青白い顔の男が本堂の前に寝ていた。

男の胸には白い山百合の花が添えてあり、雨雫の玉響が葉の上にコロコロと揺らいでいた。

なんと、死んでいる男は私だった。






坊さんと地元の連中らしき者と警官、そして手錠をはめられた逃げた女もそこにいた。



「住職さん。この仏さんは、東京でこの女の旦那を殺した男なのだが、山の岩場で滑落して、このざまだ。まあ、罪人でも仏だ。お唱えでもお願いしますよ。」

警官が言った。


坊さんが私の方を振り向き見て、静かに口ずさんだ。

「ずっと、一緒です。すべて、あなたの罪はこの雨のように流しましょう。」


外は南風を伴った強い雨。そうだ、茅花流し(つばなながし)の雨だった。









  > おもしろい!! (6/25-23:26)No.582
Angel pakuri@管理人 > てる造おじさん、逸品を投稿ありがとうございます。気付いたところについて誤字他を訂正しました。……いいですね、これも。……敢えて、苦評主人公「私」の立体像、現実像が出てこない、想像させようとしてんのかな?前の方でプロフ程度は書き表しておいた方が、食いつきがいいと思うのだが。 (6/26-12:00)No.584
企 てる造 > ぱくちゃん。お手数をおかけます。ありがとうね。 (6/26-12:30)No.585
通りすがりのリーマン > 企様>7月の占いといい、この作品といい、とても楽しく、感心して読ませていただきました。ご苦労様です。ことに、この作品は、静かで品があっていいですね。益々のご健筆のほどお祈りいたします。いつも楽しみにして居ります。 (7/2-21:38)No.587
ハタ坊 > ◎◎◎、文学色が強いが、大人の読み物?に仕上がってグ〜! (7/9-20:01)No.590


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