大学院を卒業して、仕事にも慣れて、趣味の登山に行ったときの事である。
初夏の休日に、東北の飯豊連峰に足を運んでいた。
特別、標高差がある山ではないが、懐が深い頂上までの歩行時間は、登山口から頂上までの時間よりも、登山口までの歩行時間の方が長く、徐々に少しずつ、だらだら坂を登るような道程だった。
最初から、ペースを速めながら歩いたので、いつしか疲れていた。
それでも、一面の萬緑に見せられ、気持ちも癒されていた。
強い紫外線も片陰道があるので、汗ばんだ身体を包んでくれる。
裏葉までもが風と戯れ、陽できらめき輝いていた。
そんな中を歩いていたが、汗ばんだアウターを着替えようと、木の暗(このくれ)の下に腰を落とし、タオルで汗を拭いた。
汗を拭きながら、遠目の目的の山の稜線を見つめていた。
私はその頃、仕事上で早くも派閥の嵐の中に取り組まれていた。
自分が望むことでもない。かといって、あちらこちらに、よい顔を見せる事も好きではない。どの、派閥にも属しないでいれば、誘いの言葉が飛び交う。
すでに、仕事が嫌になっていた。
1匹狼が自分には合う事も熟知していた。
付き合っていた、男の影も薄れ、別れたばかりだった。
現実の逃避から身を遠ざける事。
あの頃の年齢においては、それしか手立てが思いつかなかったのだ。
全てが嫌だった。自分自身が嫌だった。あの頃は、そうだった。
アウターを着替えると、両腕を枕に空を仰ぎ見ていた。
夜行列車に揺られ来たので、いつしか、睡魔に誘われ深い眠りに入ってしまっていた。
気がついたのは、人の声と揺り起される手の感触だった。
薄っすらと、視野もおぼろげに目を開けた。
そこには無精ひげの50代のオジサンの顔が私を覗き込んでいた。
ピチピチのカーゴパンツの裾をワークブーツの中に収め、張り付いたようなTシャツが分厚い胸板を露わにしたオジサンだった。
仰向けのままオジサンを見ると、光芒の陽が毛むくじゃらの太い腕を照らし、金色に輝いていた。
深い眠りから目を覚まし、飛び起き、時計を見た。
すでに、14時を過ぎてしまった。
時間がないと、起してくれたオジサンに頭を下げ、ザックを背負い歩こうとした時。
むんずっと、ザックに手をかけ、阻むオジサン。
言葉もなく、人差し指で太陽を指し、時計を私の目の前に突き出し、険しい顔をしている。
何度も、同じことを繰り返すオジサンだった。
オジサンは聾唖者だった。
オジサンは、この時間で頂上に行くのだと判断したのだろう。
どうも、時間的には頂上につくのは暗くなるので危険だという事を知らせているのだった。
右手を私の目の前で振り、駄目だという手振り。
私は、ウエストポーチからボールペンとメモ用紙を出し、大丈夫だという旨を書く。
すると、オジサンはボールペンを引ったくりメモ用紙に書いた。
それは、見たことも無い正確な綺麗な文字だった。
この雲と太陽は直ぐに雨足が速く、ガスもでてくる。まして、この時間から登ると、途中で暮れてしまう。危険だから、今日は諦めなさい。
私が、困惑した顔を見せながら読んでいると、
私はT市の林野庁の菅哉と言います。悪い事は言わないから、明日の天候を判断してから行きなさい。
狭いが、施設の宿泊所があるから、泊りなさい。
私は、オジサンの親切に感謝しつつも、どうしても行くと書いた。
オジサンは急に険しい顔をし、私のザックを背から剥ぎ取り、片手で肩に背負い、勝手に歩き始めた。
私は驚き、賭けより、ザックを奪い取った。
すると、オジサンは私に詰め寄り睨んだ。
私は一瞬、ひるんだが睨み返した。
オジサンは私を睨み続け、私が顔を下向き加減に目をそむけると、肩をポンッと手で叩き、笑った。
私は、それでも口を蛸のように突き出し、ふくれ顔だった。
とぼとぼと、オジサンの後を着いて歩き30分ほどすると、急に雨が降り出してきた。
オジサンは振り返り、一指し指を空に向けて一本突き出した。
見ろ、雨が降ったろうと言いたげな顔にも頷く事もしなかった私であった。
オジサンは何を思ったのか、その指で地面に、『後、10分くらいで着く。我慢しろ。』と書いた。
私は、オジサンが優越感にとらわれているのだとばかりに思ったが、実は、勘違いしていた自分を恥じていた。
私はやっと、口元をほころばせ、オジサンに頷いた。
オジサンも、私もずぶ濡れだった。
オジサンの宿泊所は高床式の丸太小屋で狭いといっていたが、かなり大きな小屋であった。
ドアを開け、入れと促される。入ると、木の香りが充満して、心安らかな木のテーブルや書棚、レンガの暖炉があった。
オジサンは熱いコーヒーを入れてくれ、濡れた私の身体に、バスタオルを投げつけた。
オジサンはといえば、私の目の前で、服を脱ぎ、下着も脱ぎバスタオルを頭からかぶるように、拭きだした。
分厚い毛むくじゃらの胸と、太くすね毛に被われた足の中心には、ふてぶてしいほどの陰茎がだらりとぶら下がっていた。
私はといえば、バスタオルを手に、オジサンを直視しながら、勃起していた。
オジサンは、私の視線を感じ、振り返った。
バスタオルで、拭きなさいという身振りを示した。
我に返り、もたもたとシャツを脱ぎ、腰にバスタオルを巻き、びしょびしょのスラックスと下着を脱ぎ始めた。
もたもたとしてると、いつのまにか着替えたオジサンが側にいた。
メモ書きした紙を目の前にちらつかせながら。
『早く、拭いて着替えなさい。風邪をひくぞ。恥ずかしい事なんか無い。』
と、腰に巻きつけていたバスタオルを剥ぎ取られてしまった。
あっと、言うまもなく。
すでに下着も脱ぎ終わっていたので、勃起したペニスをみられてしまったのだ。
私は、股間を両手で隠し、赤面していた。
オジサンはニコッと笑い、股間を隠した手の甲をポンポンと軽く叩き、頭を押さえつけるようになでてくれた。
オジサンは、厨房の方に歩いていた。
私は恥ずかしさのまま、着替えていた。
夕食の準備をするからと言い、ソラマメの皮をむくのを手伝ったり、冷凍の馬肉を切るのを手伝わされたりと、いつのまにか18時近くになっていた。
オジサンが調理をしてくれ、顔を向かい合わせで食事をしていたが、何を話していいのかわからずだった。
ともかく、お礼を言わないといけないと思い、ありがとうと言った。
オジサンは、私の口の開き方で、理解してくれた。
声は出ないので、ゆっくりと、口を開いて、言った。
ど、う、い、た、し、ま、し、て。
私は口元をほころばせ、頷いた。
オジサンは、是も食べろ、あれも食べろと、私の皿に山積みのように、取りのせてくれた。
いつしか、私はオジサンの優しさと甘い顔に酔いしれていた。
東京での出来事を思い出しながらも、息が詰る思いでやみくもに、口に運んでいた。
食べながら、私は涙を流していた。
そんな私を、オジサンは、相変わらずの笑みを絶えず見せ、見つめていてくれた。
食事の後かたずけを私がかって出て、オジサンはドラム缶の風呂にまきをくべに行くと言い外に出ていった。
片づけも終わり、私は、書棚の本の背表紙を見ていた。
そんな時、オジサンが戻り、書棚から古いアルバムを出し、テーブルにすわり、私に来いと手で招いた。
ランプの下には幼い男の子の写真。隣には若い頃のオジサンの姿が浮かび出されていた。
私は、幼い男の子がオジサンに似ているので、息子なのかと聞く。
オジサンは頷いたが、何故か、寂しそうな顔になった。
オジサンはメモ用紙に書き記し、私に寄越した。
『生きていれば君と同じくらいの年齢だ。
小学校3年生の時の夏休みに、ここに連れてきて遊ばせていたが、渓流に飲み込まれ死んだ。
オジサンの耳さえ聞こえれば、流されていた時の助けを呼ぶ声も聞こえたのに。』
オジサンの目頭に涙がにじんでいた。
私はあの時、何も言えなかった。
し〜んと静まりかえった小屋の外から、渓流の流れだけが遠くから聞こえていた。
我に返るように、オジサンはメモを書いていた。
『だから、命は大切。君のお父さんもお母さんも悲しむ、山の天候を判断して、引き返すのも山の鉄則だ。』
オジサンは、亡くした息子を私に照らし合わせてみたのだろう。
私は、紙に書いた。
≪ありがとう。オジサンの気持ちもわからずにごめんなさい。≫
オジサンは頷き、わかってくれればいいというような素振りを示した。
初めてのドラム缶風呂に入る頃には雨も上がり、空を仰ぐと満天の星がきらめいていた。時折、月にかかる雲が銀色に染まり私に迫って囁いてくるようだった。
何が辛いのか。思うのはお前だけかと。
山小屋の就寝は早い。ごたぶんにもれず、オジサンも風呂に入ってから、一日の仕事の日誌をつけ終わると、もう寝るぞ、と促すような素振りを見せた。
意を解して、私は頷く。
オジサンは、ランプを片手にドアを開けた。
そこには簡単な簡易ベットが一つ置かれていて、壁には様々な高山植物や樹木の写真が飾られていた。
オジサンは、私をそこに寝るように促した。蒲団も是しかなくベットも一つだと言いたげに。
私は山小屋の粗末な設備の中で、何度も経験しているので、平気だと指を丸めてサインを示した。
私はぶかぶかのオジサンの冬用のスエットパンツを借り、オジサンの横に身体を滑りこませた。
オジサンは、私の人指し指を自分の口に当て、口を開いた。
〈さ、む、く、な、い、か。〉
私も、オジサンの指を掴み、私の口に。
《さ、む、いけ、ど、オジサンの、た、い、お、ん、で、あっ、た、かい。≫
オジサンの古いアルバムを見てからは、この調子で会話をするようになった。
オジサンは、そうかと、頷き、私をヒシッと抱き寄せ、背中に手を廻し、眠りについた。
私は、オジサンと向い合わせで寝ている。
暗闇でも、多少の月灯りがオジサンの顔を浮かび出していた。
安らかな、優しい顔、少し、彫りが深く、行き締まった口。男らしい眉と知的な感じを与える額。目をつぶってはいるが、見開いている時の厳しくも穏やかな眼つき。
オジサンのかすかな息使いが聞こえてきた。眠りにつき始めていた。
私は、未だ、眠りにつくことは出来ず、オジサンの髭に指を這わせ、撫でていた。
オジサンの唇も指でなぞる。
私は、髭と唇を交互になぞり、飽きもせず繰り返していた。
そんな時だった。
オジサンはいつのまにか目が覚めていたようで、唇に指を這わせていると、口を急に開け、私の指をガブッと咥え、幼児をからかうように、むしゃむしゃと指を食べる真似。
私は驚いて、指を離すが是でもかと、喰らいつくように私をからかう。
私は、可笑しくて笑いながら、オジサンの口から逃れようと手だけがもがいていた。
オジサンは、私の頭を撫で、じっと私を見る。
見られている私は、急に涙ぐんだ。
大胆にも、いや、そうしたかったのだ。
私は、オジサンの胸に顔を埋め、分けも解からず、泣きじゃくった。
オジサンは、私の頭を抱え、撫でてくれ、背中をポン、ポンと子供をあやすような仕草をしていた。
私は、オジサンの胸元に顔を埋めていた。いつしかオジサンの厚手のネルのシャツのボタンが外れていて、胸毛の中に顔を埋めていた。
オジサンの胸は父親の臭いだった。
別れた男の臭いとは違う。
かすかだが、人間的な男の臭いでもあった。
私は、オジサンの胸毛に指を這わせ、毛先を指腹で撫で遊んだ。
オジサンは、私がそうしたいのだろうと思ったのだろう。
前ボタンを全て外し、私の顔を胸の中に埋めるように手で頭を押さえてくれた。
どのくらいの時間がたったのだろう。どのくらいの思いを私はオジサンに寄せたのだろう。
私は、オジサンの乳首に触り、唇を寄せた。
オジサンの乳首を赤ん坊のように吸いはじめていた。
向かい合わせで横になるオジサンの股間の辺りが、私の腹部に当たり始めた。
オジサンの陰茎がサイズを変えたのが解かった。
私は、オジサンの股間の方にと手を伸ばし、軽く触れた。
硬く、雄々しい姿に変えたオジサンの陰茎を布地越しに感じ取った。
着替え中に見た、オジサンの陰茎とは違うのが想像できた。
私は、オジサンの股間を弄り、揉み始めた。
すると、オジサンは私の指を手にし、口元に当て、言った。
〈い、け、な、い、よ。そ、ん、な、こ、と、を、し、た、ら。〉
私は、オジサンの指を口に当て言う。
《おじ、さん、の、こと、すき、なの。だ、い、て、ほ、し、い。≫
オジサンが、返すように私の指を。
〈だ、め、だ、よ。お、と、こ、ど、う、し、だ。
お、じ、さ、ん、お、く、さ、ん、も、い、る。
そ、れ、に、む、す、こ、み、た、い、な、こ、と。
だ、め、だ、よ。〉
私は、言う。
《おじ、さん。ぼく、お、と、こ、が、すき。
おじ、さん、みたいな、ひと、が、すき。だっ、こ、し、て。≫
オジサンは胸元で甘える私に目をやり、ニコッと笑いながら、言う。
甘えん坊だなと言ってるのが解かった。
私は頷き、オジサンの大きな身体に手を廻し、身体をより、いっそう近寄らせた。
しょうがない坊主だと思ったのか、オジサンは私の手が股間を弄っていても、制止することなく、私のしたいようにさせていてくれた。
オジサンの陰茎はさっきより、硬さも増し、手に陰茎の熱さが伝わってくる。
私は、オジサンの寝巻き代わりのスエッとパンツを擦り降ろし、形と大きさを変えたオジサンの陰茎を見た。
月明りがオジサンの陰茎を明るく照らしていた。
オジサンの陰茎の裏筋を指でなぞると、ピクピクと陰茎がバウンドした。
私は、オジサンの顔を見つめ、要求を眼で訴えた。
オジサンは、頷く事もせず私を見ていた。
私は、いいよと頷いて欲しいと思った。
しかし、頷かない、オジサン。
オジサンの亀頭の鈴口からは、先走りが噴出し、輝いていた。
私は、オジサンの応えは是だと思い、舌を這わせた。
ぬめり、濡れそぼるオジサンの陰茎は、小さな私の口中を塞ぎ、雄々しい大人の陰茎はこういうものだと、感慨深く思っていた。
しかし、オジサンは私の口から陰茎を抜き出し、急に私を仰向けにさせ、スエットパンツを脱がせ始めた。
そうしておいて、オジサンは、硬くなっている私のペニスを握り、扱き始めた。
私の顔を見つめ、いいぞ出して。と言わんばかりに頷きながら。
オジサンは私の手に、自分の陰茎を握らせ、笑顔で扱いてくれていた。
オジサンの暖かい大きな手のぬくもりと、優しい顔を見ながら、オジサンの手に溢れるくらいの精液が……。
◆◆◆
あの頃、私は穏やかな救いを求めていたに違いない。
オジサンの誘導で、私は一気に感情が登りつめた。
今、自分自身が捕らえている現実を少なからずとも、否定し逃避した事で、初めての地で初めて出会った、聾唖者である、オジサン。
傷つき、悔んで来たオジサン。
生きてれば、私と同じくらいの年齢の息子の写真を大切に生きてきたオジサン。自分には無い人生。自分とは違う人生を歩んできたオジサンは何処か悲しげで、せつなくてもそこで学んだ、哲学を覚えてきたのだろう。
私は、オジサンの手により、溢れんばかりの精液を出し、オジサンの手を汚してしまった事を詫びた。
しかし、オジサンは私の精液が付着した手を鼻に持っていき、鼻で息を吸い私の臭いを嗅いだ。
オジサンは嗚咽と共に泣き崩れ、私を抱きしめた。
そして、頷きながら私の腹に指で文字を書く。
《あ、り、が、と、う。》
私はその時思った。
オジサンの息子が生きていれば、今の私のような者にはならなくとも、普通の青年であれば普通のことのように、学ぶ事や、悩み事、性の処理もしているのだろう。そんな、亡くなった息子さんの青年までの過程をオジサンは知らない。知る事も無く、みすみす目の鼻の先で息子を亡くしてしまった。
今、息子さんの臭いを感じているのではと。
私を抱きしめ寝てくれたのも、息子を感じたい一心ではと。
私は言った。
〈お、と、う、さ、ん。〉
静まり返った小屋は一瞬、渓流の流れの音が止まったかのように静まり返った。
渓流に流され亡くなったオジサンの息子が、父親であるオジサンの為に一時、記憶を留めたかのように。
《りょう、た。》
そう、オジサンの口元が言った。
どんな、文字を書くのか解からないがりょうたと言った。
りょうた君と言う名だった事がわかった。
どんなにか、りょうた君の成長を見たかっただろう。
どんなにか、りょうた君に教える事があっただろう。
胸が苦しくなると同時に、自分の塞いだ心を恥じていた。
もう一度。
〈お、と、う、さ、ん。〉
オジサンは、私を先程より、苦しいほどに抱きしめた。
夜につぼんでいた野花がいっせいに開き、夜露を滴り落とす音がしたようだった。
オジサンは、強く狂おしいように私を抱きしめ、私の上に自然と、のしかかる。
先ほどの射精した精液が未だ腹に付着しているにもかかわらずだ。
オジサンと私の身体の間には、私が剥き出しにした陰茎と私の精液が付着してる。
声は出さずとも、私をりょうた、りょうたと言いながら顔に頬を摺り寄せ、身体を震わせ泣いていた。
オジサンは、私の腹の上で、暫く身体を埋め静かに泣いていた。
しかし、急に様子が可笑しいので、オジサンの顔を見ると、眉間に皺を寄せ、苦悶の表情を見せつつ、口を半分開き目が空ろになっている。
私が気がついたときには、私の腹とペニスにオジサンの硬い陰茎が脈を打ちながら、熱い男の精を吐き出していた。
渓流の流れる音が静かに聞こえ、月の灯りがオジサンと私の腹の間を青白く照らし、輝いていた。
感情とは違い、裏腹に快感のおもむくままに私を精神的に犯していたのだろうか。
それとも、息子への思いと、性的な思いが一挙に噴出したのだろうか。
しかし、そんな事はどうでもいいのだった。オジサンは私をりょうたと言いながら抱きしめた。
私はおとうさんと言いながら、抱きしめられ、うけたのだ。
オジサンは、私に詫びた。
とんでもない事をしたと。
頭を振りながら、そうじゃないと、私は言う。
私は、オジサンを仰向けにしてあげ、オジサンの陰茎についている精液を舐める為に、一気に口に飲み込んだ。
オジサンは、出したばかりだと言うのに、私の口の愛撫でまた、硬さを増してきた。
私は、口中に含み、頭を上下にゆっくりと、動かした。
オジサンは、今度は抵抗する事も無く身体を時折、ウッという状態で震わせ、腰を私の口中に押し付けて来た。
私は、右手を陰茎に添えて扱きながら、咥えていた。
オジサンが眼で私を捕らえ、言う。
出していいのかと。
私はすかさず、頷くと同時に自分のペニスをも握り、扱き始めていた。
私の頷きで、意に解しオジサンは果てしなく、息子の口中に濃く熱い父親の精を放出した。
私もまた、でそうであった。
オジサンは、そんな私を見てペニスに口を寄せ、当然だが慣れない手つきで扱いてくれた。そして、息子の精液を最後の一滴まで、飲み干し、亀頭の先から残った精液を搾り出し、吸い尽くしてくれたのだ。
人知れず、咲いていた二輪の父子野花が、人知れず愛の交換をし終えたような気がした。
親子の花びらから滴り落ちる夜露はクリスタルガラスのような輝きを放ち、ガラス細工を落としたかのような音が小屋からこだまが返すように闇夜の山中に響き渡った。
オジサンの悲しみ。
ぼくの悲しみとは違う、オジサンの苦悩。
オジサンは、ベットの上で、私の腹に文字を書いた。
《やっと、た、ど、り、つ、い、た、よ。
か、な、し、み、の、は、て、に。
も、う、く、や、ま、な、い、。
き、み、を、よ、こ、し、て、く、れ、た。りょ、う、た、が》
私もオジサンの指を口にあてがい、言う。
〈僕は、迷わない。自分を、たい、せつに、し、な、けれ、ば、
人を、たい、せつ、にできない、から。〉
オジサンは、私の頭を抱え、声を出さずに笑い、撫でてくれた。
オジサンと私は顔を見合わせ、見つめた。
オジサンは、私の唇に唇を寄せ、舌を這わせ、いとおしい息子を見る眼で、抱きしめた。
私は、朝早くオジサンが目が覚める前に起きだし、お礼の手紙と、また、来るという旨を書き留めて、目的の山の頂上に歩きはじめた。
明日という言葉が朝日を浴び、私を迎え入れてくれてるようだった。
啓明の季節の山々はこれからの自分の行く末を見るであろう、千柴万紅の如く、色鮮やかだった。
今はもう、そのオジサンもすでに他界している。
「おーい。遼太〜。お父さんと、今度、山に行こうかあ。」
「うん。行ってあげてもいいよ。」
「・・・・・・ナヌッ。くそ〜」
私の長男を遼太となずけ、もう直ぐ、後3年程で、私とオジサンが出会った年齢になるのです。
そうです。
話しでは、語り尽くされないほどに、オジサンは私にいろいろな思いと、人のあるべき姿を教えてくれた人でした。
そうです。
思い出しました。
オジサンはこんな事をも言ってくれてた。
千の利休の言葉を教えてくれた。
家は漏らぬ程で良い。食は植えぬ程で良い。
この心持には、まだなれぬ。いや、死ぬまで、なれぬだろうが。
あの頃の初夏の風景を思い出しつつ。
(閑)
[530へのレス]無題 投稿者:企 てる造 投稿日:5/19-17:05
長いので、続きは後で。また、この、お話は聾唖者の方々を侮蔑するような話ではありません。若かりし頃に、オジサンによって、大人になっていく過程のチャンスを与えてくれ、哲学を教えてくれ、感謝をしている、オジサンの話です。不愉快な思いの方は、削除願います。
[530へのレス]無題 投稿者:通りすがりのリーマン 投稿日:5/19-17:38
なんと叙情的な風景なんだ。>別れた男の臭いとは違う。かすかだが、人間的な男の臭いでもあった。<セックスではなく、こういうオジサンを求めているんだ、と納得してしまった……。魚住氏とのエッチもいいが、こういうのもしっとりしていて好き!続編は、どうか淫乱仕上げにしないでお願い。
◆◆◆
[533へのレス]無題 投稿者:企 てる造 投稿日:5/19-19:54
中途半端な文章と、内容ですみませんです。
[533へのレス]無題 投稿者:企 てる造 投稿日:5/19-19:58
舌から3行目植えぬ穂は誤字、誤植。飢えぬ程が正解です。また、やっちゃったあ〜。ごめんなさい。
[533へのレス]無題 投稿者:企 てる造 投稿日:5/19-19:59
↑舌からX。下からでした。(なさけなっ・…)
[533へのレス]無題 投稿者:Angel
pakuri 投稿日:5/19-21:27
>小屋は一瞬、渓流の流れの音が止まったかのように静まり返った。渓流に流され亡くなったオジサンの息子が父親であるオジサンの為に一時、記憶を留めたかのように。
[533へのレス]無題 投稿者:Angel
pakuri 投稿日:5/19-21:32 ↑こんな表現ができるんだぁ……てる造オジサン。ファスナー全開のオジサンとは別人? 「やっと、た、ど、り、つ、い、た、よ。か、な、し、み、の、は、て、に。も、う、く、や、ま、な、い、。き、み、を、よ、こ、し、て、く、れ、た。りょ、う、た、が」これ、きいてるね。これが文末でも良かったかも。いずれにしても今までにない味付け。おいらとしては今後この路線も大いにやって欲しいということで大◎でごジャル。……ほんとに、あの「てる造」オジサンなのかぁ?
[533へのレス]無題 投稿者:通りすがりのリーマン 投稿日:5/20-18:23
早速のアップ、感激です。しかも、エロくないけど、すごく温かいものを感じる。爽やかな感じもあるし重苦しい感じ、でも不快ではなくてなんだか懐かしい風景のような、パクリさんが書いているように、こんなのがあっていいですよね。詩情的な言葉が散りばめられて……すごく感じがいいです。オジサンとのセックスを後日想像しながら、抜くというのも一興か、なと。◎◎◎
[533へのレス]無題 投稿者:binbin 投稿日:5/21-09:28
イーーーーーーーーーーー良い。す・て・き。エロも純文学もパクリ掲示板ならではやなぁ。
[533へのレス]無題 投稿者:玄 投稿日:5/21-19:46
巧いなあ。
[533へのレス]無題 投稿者:企 てる造 投稿日:5/21-20:26
エロてる造の過去をたま〜に暴露していく所存でございます。各位方々のアドバイスありがとうございま〜す。
|