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大きな先輩小さな後輩(1)
アライグマさん 投稿日:2003/08/27(Wed) 01:19    Back Top Next


「大きな先輩小さな後輩」 第1部


    「その時の出会いが 人生を根底から
          変えることがある よき出逢いを」  相田みつを ※


 持ち込まれた本をパラパラと検品していた時に、俺の目に飛び込んできた言葉。思慮深いということに、てんで縁が無い俺にとっては、普段ならそのままページを流していた所だった。格言じみた言葉にも興味が湧かない、例え目に入る事があるとしても、それが心に染み入ってくる事はなかった。
 でも今、俺はそのページを開いたまま、何やら感銘らしきものを心の何処かに感じている。休日の店内の雑踏を一時忘れ、2年前に別れた毅(つよし)先輩の事を思い浮かべていた。


 高校を卒業して、電気工事関係の会社に就職。半年位勤めたところで、会社の強要する資格試験勉強の煩雑さの前に挫折して退社。その後は居酒屋、ガソリンスタンド、各種イベントの施設スタッフ等、様々な職種を転々としていた。その日暮らしのフリーター。どれもこれも、休みが思うように取れない事に対する不満や、チームリーダー達との諍いが原因で、半年以上続いた職場はなかった。
 気がつけば俺も22歳を迎えていた。同級生も大学を卒業し、フレッシュマンとして意気揚々と、出社している事を気に掛けた俺は、初めてアルバイト求人雑誌から、就職転職雑誌へと触手を広げていた。そこで見つけた運送会社。果たしていつまで続くか、当人の俺でさえ半信半疑な所があったけど、俺の意志とは裏腹に、退社を余儀なくされるまでの3年間頑張ることが出来たのは、同じ職場の毅先輩がいてくれたからだと断言してもいい。

 その運送会社は市内全域をカバーしていて、社内に班を編成し、それぞれの班ごとに担当する地区が違う。俺の配属された班は5班で、市の西側を受け持つ事になった。市の中でも西区は飲食店が軒並みに乱立する区域で、一番肩の荷も重いぞっ!と荷物の量と肩の荷を掛けて言ったのかは俺の察する所ではなかったけど、助手席で笑顔を湛えて指導してくれたのが、毅先輩だった。
 5班の班長であった毅先輩に、約2週間ほど、配送ルートや集荷、伝票処理などを、俺の運転する事になった2tトラックに同乗して貰い、色々教わる事になった。ちょうど、俺の年齢と同じ時に入社した毅先輩は、今年で勤続12年を迎える34歳。5歳男児と2歳女児の子宝に恵まれた2児のパパだった。短髪の大きな顔をしっかりと支える太い首、存在感のある眉、中央にドンッと据えた末広がりな穴を持つ鼻、その間には、顔の大きさには少し物足りない感じの一重瞼の目、そして情熱的な厚めの唇。長年の集荷で鍛えられた上腕筋と大胸筋。分厚い胸板の上半身をしっかり支える肉厚な太腿。がっちり兄貴が大好きな俺にとって、毅先輩はその総てを持ち合わせていた。営業所の車両助役に初めて毅先輩の紹介を受けた瞬間に、俺は恋のキューピットに矢を射られた。それが、月曜日。そして週末の土曜日にもなると、さらに追い打ちを掛けるように、今度は致命的な銀の矢を見事に俺の心臓に打ち抜かれてしまった。

 毅先輩、週の始まりにしか髭を剃らないらしく、週末の土曜日にもなると、もみ上げから顎にかけて、うっすらと髭を蓄える。野放しに生えてくる髭に手を入れる事はなく、お世辞にも清潔感があるとは言えなかったけど、その無精髭の野暮ったさが、男好きな俺にとってはたまらなく映る。入社して1週間足らずで、俺は完全に毅先輩にノックアウトされてしまった。

 毅先輩にはずっと俺の助手席で指導して貰いたかったけど、2週間の研修を経て、俺は単独ドライバーとして仕事を任されるようになり、毅先輩は俺より一回り大きな4t車へ戻っていった。
 地場の仕事は雑多に渡る。酒屋の倉庫から、居酒屋まで何十というビールケースや生樽を運んだり、食材や割り箸、各種調味料といった細かな備品まで、主に食を軸に、生産場所や倉庫から、消費される店舗までの架け橋として、俺は毎日ハンドルを回していた。
 正直、この仕事はきつい。乗用車よりもずっと大きい車体を何時間も運転するだけでも、想像以上に気力体力を使うものだし、これが夏期、忘新年会等の繁忙期になると、ビールケース、生樽の受注がぐっと増え、体を酷使して働かなければならない。翌朝も、重たい体を引きずって出社すればするで、配車担当に尋常じゃないスケジュールを言い渡されると、溜息よりも怒りが先に湧いてくる。配車係に何度、「俺は一人でやってるんだぞ!」と言い返したくなったことか。
 配車係はそれなりに学を積んでいる人か、年功を重ねている人が担当していたので、新人の俺が口を挟む余地は微塵もなくて、それで歯向かえば、自分の立場がどうなるか位は頭の弱い俺でも察しがついた。「もう辞めてやる」と決心したことなんて、両手両足の指を全部使ったって足りない位だ。それでも、俺が最後の決断をしなかったのは、毅先輩の功績による所が大きい。功績といっても先輩が何か特別に秀でた事をしたわけじゃなくて、俺が勝手に称えさせて貰っているだけなんだけど、選り好みが激しい俺の心を落とした毅先輩は、やはり勲功に値する。俺って自意識過剰で嫌な男?なんて、思われても構わないけど、当時の俺は、毅先輩にぞっこんだった。胸を焦がしていた。眠たそうに出勤して、大きな口を開けてあくびをする姿さえ、どんな宝石よりも輝いてみえたんだ。

 仕事中、時折、反対車線に停車中の毅先輩の車を見かけることがあった。俺が納品を終えて、車中で伝票を整理していると、4t車のウイングを開けて、半袖なのに更に腕まくりをして、自慢の上腕筋を見せびらかすかの様に、荷物を下ろしていた。急ぎ足で納品して、お得意先に「ありがとうございました」と先輩の威勢の良い声は、100m程離れていた俺の車までもちゃんと届いてきた。そんな先輩の姿を眺めていると、毅先輩、早々と車を始動させて、俺の車とすれ違い様に、笑顔と共にクラクションを吹鳴してくれたんだ。先輩のそういう姿が、きつい仕事の中で何度もめげそうになる俺の、一番の活力剤になってくれた。

 非の打ち所がない外見に惚れた俺は、いつしか先輩の仕事に対する姿勢にも強く惹かれるようになっていた。鞭打つ体に我が儘なお客のクレーム。これはかなり堪える。先客の、サービスを度外視した注文に時間を割き、次の顧客へ車を回せば「遅い!」とヤジられる。辛うじて食ってかかる事は抑えるにしても、社会人としての思慮分別に欠けていた俺は、適切な対応が出来なかった。憤懣やるかたない思いで仕事にあたれば、その悪態ぶりが当然客の癪に触る。そして俺が謝りもしなければ直ぐに営業所へ電話を掛ける。一度、あまりにも理不尽な扱いに堪えきれず、納品時にわざと空のビールケースを店の軒先に置いてきた事があったが、さすがにそれは担当を代えられた。
 「先輩、客、我が儘過ぎますよ。特にあの風来亭のオヤジ、なんすか?あれ?あのオヤジ、時間にうるさいから俺、気をつけてたんすけど、この前、倉庫に食材を搬入しようとしたら、『いれんでいいからそこに置いとけ』っていうんすよ。どういう風の吹き回しかと思ったら、納品伝票渡す時に『制服は毎日洗え』っすよ」
 「あの、親父は昔からああいう気質だからなぁ。それに加えてこの不況だろ。特に今は金を払う立場が強い分、横柄な客が多くなった節があるからな」
 俺が先輩に思わず愚痴をこぼした時の事だ。
 「そうっすよね。もう少し、こっちの立場を考えた物の言い方しろってんだ」
 ―わかるわかる、俺も随分と腹立てたもんだ。―
 余計な言葉を口にしなくても、その思いを含んだ先輩の余裕のある笑い声が、営業所の休憩室に響いた。俺がいくら毒気づいても、先輩の笑い声は、それを中和してしまう血清の様で、いつだって胸糞悪い気分を一掃してくれる。
 「なぁ、耕太?俺たちの仕事は物を運ぶだけじゃないんだぞ。もう一つ大事な仕事があるんだ」
 「どういう事っすか?」
 「客の身勝手な苦言を聞くことも仕事でさ。それが月給の一部を賄っているんだと思えばいいんだよ。俺たち別にサボってるわけじゃないんだから、軽く聞き流してさ、「ごめんねー」って一言いうだけで百円、二百円が稼げる。そう思えば多少気分的に楽じゃないか?まぁ、俺たちだけに限らず、サービス業全般に言えることだけどな。」
 「ふーん、先輩、なかなか巧いこと考えますね。俺、先輩の事、脳みそまで筋肉かも?って思ってたけど、ちょっと見直したっすよ」
 先輩の反応が楽しみで、俺は自分の発言に思わず吹き出しそうになってしまった。
 「ものは考えようってことさ。けど耕太、お前、ほんとに口幅ったい奴っちゃなぁ」
 生意気なのは自覚している。けど、先輩に対して小生意気な事を言うのは、特別なんだ。先輩、そんなごもっともなことを考える暇があるんなら、もう少し記憶を遡ってくれよ。先輩は好きな女の子の前で、強がったり意地悪したりしなかった?


         ※ 著書 「一生感動 一生青春」
                  著者  相田 みつを
                  発行所 文化出版局 
         上記の書籍より、一部引用しています。


Angel pakuri@編集長 > アライグマ先生へ>つかみの部分(序章)として、長いって、長すぎますがな。頭からなんもかも説明(設定)せんと、散らしなはれ。この後で描かれるであろうセックスシーンのところに移行させて、散らばらすか、先輩を見てるだけでドキドキするようなシーンを銜える(あらま、?訂正、咥え、あらま、加える)かしないと、ここまでは読んでくれないと思うよ。←キツイ。■次の、個人的な好みの問題かも知れないが……「……っず」「……っすか、」 (8/27-12:18) No.357
Angel pakuri@編集長 > 続、「……っすよ」のセリフ回し、正直なところ、キライです。その昔、さぶ系に「……押っす」とかいうのもあったが、なんで?というか、それなんなん?って感じがする。一般生活でもそういう言いまわししている人って実際にいるの?このセリフ回しで、登場人物の精神的なキャラが決まってしまう(薄っぺらな人間、バカっぽい←言い過ぎだってばよー)印象がある。できれば、小説の中で、毅先輩に「おい、耕太、そのお前の、なんとかっす、っすか、とかっていう言い方は止めないか、ガキじゃないんだから」とか注意させて、セックスシーンでは耕太が「っす」を連発しても先輩は何も言わないでその雰囲気を容認している。……くらいにして欲しいのだが……個人的好みかな。作家センセに対してちょい、きつめのレスになってしまったが、ご容赦、ご勘弁を 続編待ってます (8/27-12:34) No.359
アライグマ > パク編集長、色々ご指摘ありがとうございます。書き手としては、わかりやすく、読みやすい物を、という事は意識していますが、パク編集長から見るとストーリーの進行が説明だけに終始して固くなっちゃってる、ということですね。力量不足で、なかなか構成まで配慮できません^^;アセアセ 自分で書いた物は、どうしても贔屓目に読んでしまって、なかなか改善点が見つかりませんが、これからも忌憚のない意見を聞かせてください。 (8/28-13:59) No.362
アライグマ > 今回の作品は、ほぼ8割方完成してしまっているので、加筆修正を加えつつ、なるべく短い期間で投稿を終えたいと思ってます。(ここだけの話、完成するのを待っているといつまで経っても完成しないので、自ら背水の陣に^^;) あと、「〜〜っす」「〜〜っすよ」ってそれ程、抵抗感じます?僕はそれ程、抵抗がなくて、うちの会社にも「おはよぉ〜っす〜」って自然に使う人がいますよ。僕はその子が気に入っているので、やっぱり贔屓目に見てしまってるのかもしれませんが^^; 暫く、Hシーン出てきません。出てきても、少しだったりしますが、どうかよろしくお願いします。 (8/28-14:10) No.363
Angel pakuri > >暫く、Hシーン出てきません。出てきても、少しだったりしますが ――あかんやん、それ!こらぁ早うHシーン出せ出さんかい、われっってばよー。あれーっ?単なるおいらの要望だったわけやね。、「〜〜っす」「〜〜っすよ」って、実際、いるの。なら、しゃあないかなぁ……ぶつぶつ……おいらは好きじゃないなぁ……ぶつぶつ……あれま、おいらって、ケッコウおっさん入ってるってことかい、もしかして……ぐぅ。 (8/28-20:37) No.364


アライグマさん 投稿日:2003/08/27(Wed) 01:19      Back Top Next
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